医療は人の健康のためにありますが、ときにはマイナスに働くという面もあります。歯科治療には外科的侵襲があり、レントゲン撮影には放射線被曝があり、薬には副作用があります。しかし、医療による恩恵が、これらのマイナス面を無視できるぐらい大きいからこそ、私たちは積極的に治療に取り組むことができると考えています。私たちは、治療の選択肢をあげるとき、必ず何もしないという選択肢も考慮しています。また、できるだけ体や組織に負担の少ない治療法を提案しています。

　一昔前まで、むし歯は早期発見・早期治療の時代でした。しかし、今日カリオロジー（むし歯医学）の進歩により、早期発見・早期管理が重要になりました。初期のむし歯は、再石灰化で治ることが分ってきています。　私たちは、これまでも、経験からむし歯の大きさ・深さ・色調・触感などで、治療の要否を判断してきました。さらに客観的判断の基準として、レーザー波・ダイアグノーデントを用いて、削って治療すべきかどうか判断しています。

　むし歯が深い場合でも、できるだけしんけいを残すように努めています。しんけいを取ると歯は、中から水分栄養が供拾されず、もろくなり歯が死んだことになります。多くの場合、20年ぐらい先には歯根破折して抜歯しなければいけなくなります。MTAセメント、カルシウムシリケートやレーザー治療を併用して、しんけい（歯髄）保存に努めています。

　歯周病治療の基本は、原因の除去と考えています。プラーク（歯垢）・歯石の除去が、最も大切と考えています。歯垢・歯石は、ほとんどが細菌からできています。
除去方法には、ホームケアとオフィスクリーニングがあげられます。ホームケアは、お家でのブラッシングですが、当院では歯科衛生士の術者磨きでプロの歯磨きを実感体験してもらっています。オフィスクリーニングは、当院内での超音波スケーラー（清掃機）や手用器具を用いた治療法で、歯周病原因因子の完全除去のため、歯面・根面の徹底清掃を行っています。

　歯周病が中等度進行している場合、完全清掃のうえに薬剤を併用することがあります。位相差顕微鏡で原因菌を調べた後、抗真菌剤の外用や、抗菌剤の内服をすすめることがあります。歯周病治療で、外科手術はできるだけ避けるようにしていますが、手術が適応となれば、可及的負担の少ないレーザー治療を行っています。

　私たちが望んでいる仕事は、治療ではなく、予防です。むし歯や歯周病は、生活習慣病で、患者さん自身の健康づくりが大切です。来院者の皆さんが、ずっと健康で過ごされ、生きがいをもって充実した日々を送れるよう、そのお手伝いをしたいと思います。定期的に健診やプロフェッショナルクリーニング（プロの徹底清掃）をうけられることをおすすめします。笑顔で来院されることを楽しみにしています。

入れ歯作りへの思い入れは、私の両親への思い入れです。私の母は、むし歯で苦労していました。私が子供の頃、母の笑顔は金歯・銀歯のキンギン・キラキラでした。高校生の頃は、もう部分入れ歯をいれていました。私が歯医者になろうと思った理由の一つは、母によく咬めるきれいな入れ歯を入れてあげたいという思いからです。その夢は1回だけかなうことができました。大学院生だった頃、アルバイト先で母に新しい入れ歯を入れることができました。しかし、その頃はまだまだ歯医者になりたてだったため、ベテラン技工士さんや衛生士さんに随分助けてもらいました。数年後、母は他界したため、最初で最後の入れ歯となりました。
入れ歯は　母への恩返し、親考行の気持ちを忘れず、心を込めて作っています。

　インプラントは、あたかも新しい歯が生えてきたかのように、機能的審美的に優れています。しかし、治療期間が長く、保険がきかないという欠点もあります。　欠損（歯のないところ）の部位や大きさ、咬み合わせによっては、インプラントが第一選択になることも　ときにあります。すべての視点を考慮し、ご提案していきたいと思います。
　当院のインプラントシステムは、Ｉ Ｔ Ｉ 、プラトン、京セラです。

　インプラントの術前・術後のレントゲン診査はヨシダ社製エクセラスマート3D（歯科用CT）を用い、正確な診断に努めています。

　保険診療では、修復材料が限定されるため、審美的にはやや見劣りすることがあります。天然歯の色感を出すにはセラミックスの歯冠修復がベストと考えています。オールセラミックス、ジルコニア冠、ラミネートベニアを中心にご提案しています。尚、セラミックス、ポーセレン、陶材は同義語です。

　白い歯が美しいという審美観が、社会に浸透しています。当院では、オフィスホワイトニングとホームホワイトニングを併用して行っています。審美のセラミックス修復される方には、前処置としてホワイトニングをおすすめします。